県立柏原病院の小児科を守る会

  
  


  私たち「守る会」のメンバーは、みんな子育て中のお母さんです。
  妊娠、出産、そして子育てと、柏原病院の先生方には大変お世話になってきました。

  2007年春、産科・小児科がなくなるかもしれないと知り、
  先生の役に立ちたい!私たちにできることをしていこう!と「守る会」を結成しました。

  私たちに何ができるだろう?
  何をしたら良いのだろう?
  今もなお自問自答しています。

  私たちは、私たちの暮らす丹波が、
  安心して子どもを産み育てられる地域であり続けて欲しいという思いから活動を始めました。
  そのためにはお医者さんの力が不可欠です。

  「子どもを守りたい!」
  そして
  「お医者さんを守りたい!」
  その気持ちが活動の原点でした。

  県立柏原病院の小児科を守る会として活動を始めたのですが、
  活動を進めるうちに、
  小児科だけでなく、柏原病院だけでなく、
  私たちが守りたいのは、ふるさとの地域医療だと強く思うようになりました。

  そして、お医者さんと住民は、医療を「施すもの」と「受けるもの」
  という相対するものではなく、
  ともに力を合わせて地域の医療を作り上げていく
  パートナーのようなものだということにも気が付きました。

  私たち住民にできることは、
  今いるお医者さんを大切にし、
  働きやすい環境、医療に理解のある地域づくりを進めることだと思います。

  子どもも親も、そしてお医者さんも
  誰もが安心して暮らせる地域づくりのため、私たちにできることを
  地域のみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。







  丹波市内で唯一、小児の入院を扱う「兵庫県立柏原病院」の小児科が
  閉鎖の危機にあることを知ったのは2007年4月のことでした。
  2人しかいない柏原病院小児科の先生のうち1人が県の人事で院長に就任。
  現場に残されたもう1人の先生が「これ以上の負担に耐えられない」と
  退職の意向を示されたという衝撃的な記事が地元丹波新聞に掲載されました。

  その後、記事を書いた足立智和記者の呼び掛けで座談会が開かれました。
  座談会の目的は
  「柏原病院小児科・産科の危機を子育て世代はどのように感じているか?」
  ということを、記者自身が知りたいというものでした。

  『そんなの困る』 『何でこんなことになったの?』 『これからどうしたらいいの?』
  母親たちからの不満めいた声が続く中、足立記者が
  「お医者さんの勤務がどれだけ過酷か知ってる?」
  と声を掛けると、その場にいた1人の母親が体験談を語り始めました。

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  喘息発作の子どもを連れて夜間救急を受診した。
  夜8時に病院に行くと、すでに30人ほどが待っていた。
  やっと診察の順番が回ってきたのが午前2時。
  入院が決まり病室に通されたのは明け方の4時だった。
  そのまま親子で寝てしまったが、
  翌朝目を覚ますと「処置しておきました」と書かれた置手紙がベッドサイドにあった。
  そして、翌日も普段どおりに診療を行う先生を見たとき、
  「先生、寝てないんだ」ということに気が付いた。

  「うちの子の病気のこと考えたら、
  柏原病院の小児科がなくなるんはほんまに困るんや・・・
  でも、先生のあんな姿見とったら『辞めんといて』とは、よう言わん・・・」

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  最後は涙声になっていました。

  先生に辞められたら本当に困ってしまう、そんな母親が、そこまで言うなんて・・・。
  それほど先生方は疲弊していらっしゃるのか・・・。
  子どもが幸い健康で、柏原病院にかかったこともないような他の参加者にとって、
  この言葉は本当に衝撃的でした。

  それまで不平・不満を口にしていた様子はガラリと変わりました。
  私たちは、お医者さんの過酷な勤務実態、
  またその一因に、患者の無理解による「コンビニ受診」があるのだということを知りました。

  これ以上「先生頑張って」なんて言えない。
  この現状をもっとたくさんの人に伝えなければ!
  たとえこのまま先生が辞められても、住民に非難されるようなことになってほしくない。
  これまでお世話になった先生のために何ができるだろう?
  あれこれ考えた末、私たちは署名活動を始めました。

  5万筆を超える署名を県へ提出したものの、期待していた結果は得られませんでした。
  行政の対応を待つ間に、お医者さんはどんどん疲弊し、
  地域から立ち去ってしまうかもしれない・・・。

  私たちは学びました。
  『人任せにしても解決しない』

  行政に頼るだけではなく私たち自身が行動し、
  お医者さんが働きやすい地域を作るしかないと気付きました。
  お医者さんの増員を願うのではなく、
  今いるお医者さんを大切にする地域づくりを進めていこうと決意したのです。

  そして住民として出来ることを3つのスローガンに込め、
  活動を展開するようになりました。









  「コンビニ受診を控える」ということは
  決して「無理して我慢する」ということではありません。

  ここでいうコンビニ受診とは、
  軽症にもかかわらず、二次救急のための夜間外来を自己都合で受診することです。
  本当に必要な人が必要な時に医療を受けられるように、
  また、病院の勤務医の負担を減らすためにも、
  症状に応じて病院と診療所(かかりつけ医)を使い分けるよう呼び掛けています。

  『軽症の人は、より重症な人に診療の機会を譲りましょう』 ということです。
  軽症ですぐに二次救急病院を受診するのではなく、まずは「かかりつけ医」で受診しましょう。
  そのためにも普段から気軽に相談できる「かかりつけ医」を持つことが大切です。

  守る会が活動を始めて間もない頃、
  「コンビニ受診を控えよう」という呼び掛けが先行し、
  かかりつけ医への受診をも控えてしまう保護者が増えていると知りました。
  症状が悪化してから受診するため、かえって柏原病院への紹介が増え、
  勤務医の負担になっていると市内の開業医さんから教わりました。
  このことがきっかけとなり、
  「コンビニ受診を控えよう」「かかりつけ医を持とう」
  これら2つのスローガンは必ず併せて伝えるよう注意を払っています。

  「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」
  医療が進歩した今、治って当たり前という思い込みはないでしょうか?
  具合が悪い時に、いつでもお医者さんに診てもらって当たり前という気持ちはないでしょうか?
  その考えを改め、日ごろの感謝の気持ちをきちんと伝えることがとても大切だと思います。

  お医者さんに感謝の気持ちを伝えるということを
  多くの人に実践してもらいたいという思いから、
  柏原病院小児科外来の窓口に「ありがとうポスト」を設置させてもらっています。
  集まったメッセージは小児科前の廊下に掲示しています。

  また、講演に招待された先でも「ありがとうメッセージ」を書いていただこうと
  今では「ありがとうポスト」を持って、いろいろな所へ行っています。
  皆さまに書いていただいた「ありがとうメッセージ」は
  一枚ずつ宛先を調べ、宛名にあるお医者さんのもとにお届けしています。
  感謝の輪(和)が全国に広がることを願っています。







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